姫と魔王の城
強い想い
娘は一呼吸置いてから言った。

「人間と戦争をしたくないのが私と同じなら、ここにいる魔物たちと私を連れて、人間たちから離れたところに住む場所を移動して頂きたいんです!…姫様の魔力は使わずに…!」

「何だと!?」

「誰も傷ついてほしくないんです!魔物も人間も!!王様たちには、私が人質になり人間たちから離れて暮らすから、もし魔物を見つけても傷つけないように、と言って欲しいんです!!」

「……。」

魔王は呆然と娘を見た。

「貴方にとって…私は必要の無い人間です…。でも、私に優しくしてくれた魔物たちの…そして、貴方の役に立ちたい…。お願いです…!要らなければ、終わったら私を捨てても構いませんから……」

娘の目からは大粒の涙が溢れた。

「お前…。…私ももう、これ以上皆を人間どもに傷つけられたくは無い…。だが、この姫の魔力をと言ったのは何故だ…?使えば交渉に持ち込めなくなるという理由だけではないだろう?」

「っ…それは……これ以上貴方に、愛してもいない相手の力を、使って欲しくないからです…」

娘は下を向いたまま言った。

「……こんな時にまで、私のことを案じるか…。」

「……。」

「お前なりに懸命に考えたのだろう…良く分かった…」

魔王はゆっくりと頷くと、姫の周りの鳥籠を腕で払って姫を出し、娘を片腕で抱きしめて、三人を光で包んだ。
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