悪魔が気に入るお飾り人形!
魔女さんの御守りとレイさんの癒し
「…ホタルさん、そのネックレスは魔女の願い入りのパワーストーンが付いています。近々起きるであろう困難に打ち勝ち、どうか幸せが訪れますよう……」

「ありがとうございます…!」

そうだ、お店の品物をもらった上、占ってもらったのなら忘れてはいけない。

「え…と……おいくらですか…?」
(どうしよう…私、お金無いのに…)

「ふふっ、大丈夫ですよ。レイ様が支払って下さっていますからね。」

「え…?」

レイさんが私のネックレスのお金を?

「そうだったな!ホタルをいつか連れてきてくれと言われてたから、そのときに渡した!」

「え…??」

「レイ様には私の援助、もといアルバイトをして頂いているのです。レイ様のことですから、あなたには何も言わなかったのでしょう。大丈夫ですよ、お金の心配は。」

「知らなかった……」

私はレイさんのことを何も知らなかった。まさかアルバイトまでしていたなんて…

「仕方ありません…。レイ様もよく分かっていらっしゃらなかったのですから。」

「面倒掛けるなあ、クォーツ…」

レイさんは申し訳なさそうにクォーツさんに言った。

「良く分かってない…?」

「レイ様はこちらに来られたばかりですし、お金自体の扱いに慣れていらっしゃいませんから、私が管理させて頂いているのです。私は魔女ですし、人間界のお金にはそれほど強い執着はないので。」

(クォーツさんがすごく親切で良かった…。でもレイさん、自分のいたところではどうしてたんだろう…??)

「あ、それでクォーツ、『仕事』の話なんだけど……」

「レイ様、今日はホタルさんがいらっしゃるからやめておきましょう?ホタルさんも大切なお客様なのですから。」

「いいのか?じゃ、また明日だな!」

レイさんとクォーツさんが笑う。

「はい、また明日にですわね。ホタルさんもまた、レイ様といらっしゃいね。」

「ありがとうございます…」

「…自信を持って…。大丈夫よ……」

クォーツさんは優しく笑った。

「は、はい…!」


もう一度挨拶をして二人で外に出た頃には、もう真夜中あたりらしく、人もまばらだった。

「よし…帰るか……。ホタル、掴まってろな…」

レイさんは穏やかにそう言うと、私を包むように抱きしめた。

「あ……」

私の足が地面から浮いて、レイさんと私はゆっくりと空に舞い上がった。

「…怖いか?絶対、離さねえよ…!」

優しく笑って、だけどしっかりとそう言ってくれたレイさんに、

「はい…!」

私はそう言って、レイさんの胸に顔をうずめた。

(ずっとこのままいられたら……ううん…せめて、レイさんに優しくされてる感覚のまま、人形になれたら……)

月が照らす夜、二人とも言葉をかわさないまま家を目指した。


家に着くと、レイさんはグッタリとベッドにそのまま横たわった。

「レイさん…!!」

私はすごく不安になった。

「…心配すんな〜…一日で、魔力を使い過ぎただけ…。元々…俺の魔力は…弱い……」

そこまで言って、レイさんはそのまま眠ってしまった。

(私を散歩に連れていくために無理したんだ……)

私はなぜか胸が熱くなって、初めて自分からレイさんを抱きしめた。

(ありがとう……早く、レイさんの疲れが取れますように…)

その身体の心地が良い温かさに、私もそのまま眠りに付いた。
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