悪魔が気に入るお飾り人形!
レイさんとの絆は私の転機
強くドアが開いて、レイさんが帰ってきた。

「アニキ!!強い魔力感じたから…やっぱり……」

「…レーガンド、『兄上』と言え。」

待ち焦がれた彼の声はすごく必死だった。

「っ…兄上!…この娘は、私の可愛がっている大切な『者』です!どうかその手を…!!」

兄上と言われた人は動じた様子もなく、自分の服を正し、私の上から離れてから言った。

「お前はしばらく帰らず、このような醜い場所で人間なんかと…!こんな物があるから、人間になりたいなどおかしなことを言い出すのだろう!コレは私が庭園の装飾にでも使う!帰ってくるのだ。」

「私は…人間がつまらないものだと思っていません!それに、その娘を兄上の慰み物にするのは、どうか止めてください…!!」

「…魔族の王子がこんな人形まがいの人間の娘になど…!下等のくせに、恥を知れ!」

「私は……俺は王子なんか関係ない、どうせアニキが王になる…!俺を認めてもくれない魔族の娘たちにご機嫌取りを続けなきゃなんないなんて、もう嫌なんだよ!!」

「お前は今まで通り、ヘラヘラと笑って目立たぬよう雑用をこなしていれば良い…!お前のような魔力の弱い出来損ない、娘たちに媚びねば娶《めと》ることすらも出来ぬことだろうがな!!」

…お兄さんみたいなのに、レイさんになんて酷いことを言うんだろう…。ずっとそんなひどい扱いだったんだ……

「俺は戻らない!!こいつがいればいい、それに俺は人間として生きていきたいんだ!!魔力なんてもういらない!!俺は、自分のために魔力を使い果たして、自分らしく生きる!!」

お兄さんはしばらく、怖い顔をしてレイさんを睨んでいたけれど、何も言わずに立ち去った。

レイさんはボロボロになった私に駆け寄って、すごく悔しそうな顔をした。

「悪い…!!間に合わなかった…アニキにお前……」

「…平気…です……。」

「顔が真っ青だろ…!俺……」

「…レイさん…来てくれたから……」

彼は悲しそうな顔をしたあと、苦笑した。

「…お前……。驚かないのな…こんな奴が魔族の第二王子だ……」

「レイさん…お父さんよりずっと優しいもの……王子様でも、いいの……。」

レイさんはベッドに私を抱え上げ、そのあと抱きしめた。

「ごめん……痛かったろ、怖かったろ…ごめんな……」

私は首を横に振った。
ペット代わりでもいい、すごく心配してくれたことが嬉しくて、感情を殺すのも忘れて涙を流した。

この人は…私に感情をくれた……
だから私はこの人のために、望む姿になろう…

「私…レイさんがそばに置いてくれるならいい……好きでいてくれるなら…頭を撫でて…抱き締めてくれるなら……レイさんの好きな姿にして下さい……私、人形にしづらくなっちゃったかもしれないけど…レイさんなら、きっと出来ます……」

レイさんは私を抱きしめたまま震えていた。

「バカだな…バカだなお前……。いくら魔力が弱くても、お前の魂が、ここに来たばっかのときより強くなったことくらい、俺にだってわかるんだよ……」

「…!」
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