魔族の王子の進む道
王子の帰還と悩み事
「兵士様、本当にありがとうございました…!どうかお気をつけて…」

娘の母親が言う。

「兵士様〜!ありがとうございましたっ!」

娘も言う。
村の者たち皆が、口々に頭を下げ、礼と見送りの言葉を彼に掛けた。

「あぁ。」

「私どもは飛ぶ事は出来ません。申し訳無いのですが、こちらでお見送りさせていただきます。どうかお気をつけて…」

彼は呑気な集落をあとにし、ようやく自らの城に向かって飛び立った。



それからの彼は、見た目にも分かるほど一層、影を背負うように暗くなった。
城の者たちは、半日も帰らなかった彼が戻ると早々に尋ねたが、

「娘は助けた。」

と言っただけだった。

明らかに様子がおかしいのだが、何があったのかも、何かに怒っているのか何かに困っているのかも分からず、何も言わぬ主に何時ものように接するしか無かった。


彼は、娘や小角族の者達が気になって仕方なかった。

要務が終わり一休憩入れるたび、何度も見通しの間に行こうと思った。
しかし、見通しの間は要務の為の場所。自身の興味だけで見るなど、反している気がして気が(とが)める。
それに、自分が不思議な気分になった、あの一族の村を見てどうするのかなど、理由も目的も思い付きはしない。

モヤ付いた気分を抱えたまま、要務で世界を見渡し直ぐさま部屋を出ることを、彼は数日間繰り返していた。


「王子…何をお考えなのか存じ上げませんが、もっとお気を楽に持たれたらいかがでしょう……?」

家臣が見兼ね、恐る恐る彼に声を掛ける。

「分かっている…!」

彼は苛つきと焦りが入り混じった様子で返す。
家臣はため息を付き、小さな声で愚痴た。

「第二王子様ならば悩み続けるより動く方だというのに、ラインデンド様と来たら……」

「…何か申したか!?…部屋に私だけにしろ、出て行け!」

彼は聞こえていた。
そう、弟だったならば、悩み続けたりはしない。前向きな、あの娘のように自ら行動を起こしたはず。

「……。」

しばらく考えたのち彼は、これは要務だ、と自分に言い聞かせ、見通しの間に入っていった。
< 18 / 27 >

この作品をシェア

pagetop