魔族の王子の進む道
いつか、きっと
それを聞くと娘は、いつもと変わらぬ無邪気な笑顔で彼に言った。

「じゃあ、いつか弟王子様に会いに行きましょう〜!人間になったお祝いを言いに!!一生懸命探せば、きっと王子様なら会えます!!それで、謝りたいことあるなら、それもしましょう!!ね、王子様!!」

「……。」

きっとその通りにすれば、今までの過ちが正せる、そんな気がした。そしてその娘の言葉が、重かった彼の気分を軽くしたことに気が付いた。

「…。そうだな…。それに早く、奴のことを皆に伝えなくてはな…」


魔力が強いため、第二王子よりも背負わされるものは多かった。
不器用さもあるため、王家の者たるもの気品高く居なくては、というのが強く出てしまい、弟を心配していることを上手く表すことも出来ず、内心では葛藤していた。

両親も魔力尽きて亡くなり、これからは忙しくなる。誰も頼らず、誰にも相談しなかった為、独りで抱え込んでいた。これからはせめて心の支えがいるであろうという時だった。

「…お前の大切なものを、私は奪うところだった…いつか、謝りに行く事ができるだろうか……」

のどかな集落と呑気な娘を遠目に見ながら、彼は去って行った弟に想いを馳せた。



「王子様〜!!今日は何のお勉強教えてくれるんですか〜!?」

彼は娘の集落にしばしば出向くようになった。
それだけではなく、他の魔族の街にも出向き、見通しの間だけではなく自らの目でも、世界の様子を見に行くようになった。

「ゼラ、まだ隣の街に住むドラゴン族の視察が残っている。それに、蒼月の頃(夜)の食事は、本日は城の者達と摂ることになっている。悪いが……」

そこまで言うと、娘は目を潤ませ、泣きそうな顔になった。

「っ…最後まで聞かないか!ゼラ、これからお前に、我が城まで同行しろと言うんだ…!!」

「どうこう…同行…!…王子様と一緒に行っていいんですかぁ!?」

娘は驚いた顔でそう返す。
彼は後ろを向き、わざと毅然とした声で言った。

「そう言っているだろう。その代わり、まだ視察がある。他の魔族とは、私が良いと言うまで口を聞くな。」

娘は首を傾げた。

「なんでですか??」

「…お前を好くのは私だけだ…!他の者にお前が気に入られては、私が黙っていない…!!」
< 25 / 27 >

この作品をシェア

pagetop