婚約破棄をして乗り換えた元彼と妹と私の幸せ【現代、短編】
「婚約破棄を宣言する」
 彼氏が妹の肩を抱いて現れた。
「あー、はぁ」
 婚約破棄?
 うん、まぁ、付き合って半年。結婚したいねー。そうだねーみたいな話を一番盛り上がっている時にしたような気もするけれど。
 いつからそれが婚約になったのか?
 それとも……あれかな。
 妹が単に「婚約破棄」っていう単語が気に入っていて「お姉ちゃんと婚約破棄をなんたらかんたら」って散々彼に言って洗脳されたのかしら?
 ぼんやりと考えていたら、何を勘違いしたのか彼……いや、元カレ?が言葉を続ける。
「知っているんだよ。君が妹に対して様々な酷いことをしていたのは」
 いや、はぁ。
 妹のほうが酷いんだけど。とりあえず姉の婚約者だと思っている人に手を出した時点で最悪でしょ。
 冷静に考えて、最悪でしょ。
 ま、いいや。ここ1か月は別れようかなぁなんてうっすっら思っていたところだから。
 言い出す手間が省けてちょうどよかった。
「はい、わかりました。妹と付き合うんですね。お幸せに」
 ――なれるかしらね?
 妹は、相当な「メンヘラ」ですけど。
「ちょっと待て」
 手を振って立ち去ろうとする私を元カレが引き留めた。
 なんだよ。
「酷いことをしていたのは認めるのか?例えば、柚芽ちゃんがせっかく作った料理をこんなもの食べられないと突き返したり」
 はいはい。しますよ。します。
 だから、妹はお花畑でメンヘラなんだから。人の話は聞かないし、いつも自分のことばかりだし。


★後日談 元カレと妹★
「あのね、柚芽ね、今日はクッキーを焼いてきたの」
「うわぁーありがとう……柚芽ちゃん、これ、何が入ってるの?」
「えっとね、これは林檎で、こっちがチョコよ、さあ食べて」
「美味しそうだね。いただきます」
 元カレがクッキーを食べた。
「!」
 アレルギー反応が出た。
「ご、ごめん、これは食べられない」
< 1 / 20 >

この作品をシェア

pagetop