俺とキス、試してみる?
コーヒーを飲みながら雑談をしている、同僚の彼を見て私が考えていたのは。

……キス、したい。

だった。

いや、これだと私が欲求不満みたいだが、……まあ、そうかもしれない。
彼氏がいたのなんてもう遠い昔の話だし。
しかし彼にこんな感情を抱くとは。

一つ年上の彼は頼もしい先輩であると同時にライバルだ。
とはいえ、私が一方的に思っているだけだろうけど。

……〝顔〟は間違いなくいいよね。

短めに切られた黒髪を七三分けにし、ナチュラルに左に流している。
柳のような切れ長な目、鼻筋だって通っている。
それでなくても整っている顔を、細い銀縁のスクエア眼鏡がさらに引き立てていた。
ん?
キスするときにあの眼鏡は邪魔じゃないんだろうか。
いや、私が奴とキスするとかありえないから関係ないけど。

……スタイルもいいか。

背が高く、手足が長い。
ややもすれば机の下で足が窮屈そうだ。
さらにスーツがよく似合う。
きっと、社内一似合っている。

……んで、あの唇がさー。

薄いけれど、形の整った唇は魅力的だ。
いままであの唇で何人の女性とキスをしてきたのだろう?
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