イケメン年下男子との甘々同居生活♪
「いや、やっぱりダメね」

「朝から何を言っているんですか?」

 ひんやりする空気に上半身がぶるっと震えてしまう。
 お互いクリスマスイブの夜に無理やり仕事を終えて帰宅するなり、甘い感じの空気になりさっと食事を済ませてお風呂もいつもより十分も早くあがって部屋で待っていると、背中から抱きしめられそのまま甘美な時間を過ごしていた。

 そして、朝になっていよいよ今日はクリスマス本番! 今まではあまり気にしていなかったけれども、人生でこれほどまでホワイトクリスマスを望んだことはない。

「やっぱり今日って雪は降らないのかしら?」

「え? 雪って……」

 外を見る樹くん、その視線の先には乾燥し晴れた空があり雪の気配などまったくない。
 私が握っているスマートフォンの天気情報をいくつかのサイトをめぐってみても確率はどこもゼロの数字を示している。

「なに? 問題でもある? 私だって……そ、その好きな人と過ごすクリスマスなんて久々でちょっとぐらい夢みても良いじゃない」

 少し不貞腐れた感じで言うと、クスリと笑って手を私の肩に伸ばしてくるなり、またベッドへと引き込まれていく。
 二人の体温で温められた空間は居心地がよく、彼の香り満たされており胸板に鼻を近づけてスッと息を吸い込んでしまう。

「確かに、特別なクリスマスにしたいですよね。それは僕も一緒です」

 なんだか、若干緊張したような声色に違和感を感じてしまった。
 でも、恋人も同じようなことを思っていてくれていると思うと嬉しい。
 それからは、中々ベッドから抜け出せない、一瞬彼の息子(・・)が反応して硬くなってしまったが、今日は予定があったので堪えてもらう。
 ちょっと切ない感じの表情になるのは卑怯だと思う、そりゃ私だってできるだけ応えてあげたいけれども……。

「それで、どうしますか?」

 着替えを終えてリビングで珈琲を飲んでいると準備を整えた樹くんが部屋から出てきた。
 
「ん? とりあえず、買い物のついでに靴ぐらいかしら? 何か欲しいものあるの?」

「こっちは特にないですね、食べ物ぐらいでしょうし」

 今日は以前言っていたように、特別なことはせずに家で二人の時間を楽しむことにした。
 だって、最近まで学業と仕事が忙しくあまり関わる時間が減っており、忙しく外で過ごすよりもダラダラと二人だけの世界で贅沢に時間を浪費してみたいと考えている。

「それじゃ、行きますか、どこでご飯食べる?」

「あ、僕は牛丼屋が良いですね」

 なんとも色気なのない会話だが、そんな気さくな感じも悪くない。
 そう、特別な日に誰もがしたいと思うかもしれない。
 それは私たちも一緒なのだけど、無理する必要はない、お互いの心地よい距離感で外を歩くと吐く息が色を濃くしていた。

「うっし! これでだいたい揃いましたね」
「うん、大丈夫じゃない? でも……これ? 本当にいいの? 無理しないでね?」
  

 私の指がある商品を指している。
 買い物を済ませて、会計の途中にいつの間に入ったのか見慣れないお酒が一つ入っていた。
 ひょいっと持ち上げてアルコール度数を見てみると一パーセント未満と記載されている。
 
「こ、これはお酒じゃないんですよ」

「う、うん、そうかもね」

 なんで目が泳いでいるのかわからないけれど、まぁ今日ぐらいは大丈夫でしょう。
 それに外にも出ないし問題ないわよね。
 
 そのままお会計を終えて、二人でエコバッグを持ってお店の外にでる。
 彼からはできたてのチキンの香りが漂ってきて、既にお腹が空いてしまう。
 
「タンドリーチキンなかったですね」

「あったじゃない」

「でも、二人だと多すぎません?」

 まるまる一羽のやつは売っていたが、あれを小分けにはしてくれないだろうか?
 ぜったい、そっちのほうが需要があるように思える。
 
「その代わり、美味しそうなチキン買えたじゃない」

 カリっとした衣が特徴的なチキンで、米粉を使っているので試食してカリカリ感が好きで購入した。
 
「確かに、それに……」

 重そうなバッグからはいくつもの食材が顔をのぞかせており、これから家でゆっくりと準備を進めていく。
 タンドリーチキンも家でできないか調べてみたが、さすがの彼も自信がなく今回はパスすることにした。

「生ハムメロン楽しみ」

「その組み合わせが美味しいなんて信じられない」

 誰もがそう言う、食べてから言っていただきたい! 
 どっちが何を準備するかを相談しながら家に到着するとさっそく準備が始まる。
 クリスマスソングを流しながら鼻歌まじりで肩を並べてキッチンで過ごしていく。

「つまみ食いできるので、お昼ご飯は必要ないですね」

「何を言っているのよ。味見はダメ、自分のはOKだけど私のはダメね。完成まで楽しみにしてて」

 私が子どもころに流行った曲が流れると「あ、これ知っています」と言われてしまう。
 ジェネレーションギャップは思ったりも感じたことはないけれど、この頃僕は〇〇歳でしたって言われるとゴーンっと何かが深く心に刺さるような気がしてしまう。

 でも、こんな空気が好きで楽しいと思う。
 右に体重を傾けると、コッと肩が彼の腕に触れる。
 それだけで嬉しい、換気扇の音とクリスマスソングにお互いの笑い声があるって素敵じゃない?
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