優しい音色ね、と。
 その夜、ママが誉めてくれた。
 わだかまっていた氷柱が、音を立てて崩れたような気が、する。
 音鳴だからできる音だと、ママが鈴を鳴らすように笑う。何があったのかしら、って悪戯っぽく。
 わざと譜面に目を走らせて、知らないフリをする。だけど。
 恋をしたからだよ、って。
 心の中でママの背中に向けてこっそり告げる。
 やっと、自分だけの音を見つけたような、そんな気が、したから。