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 すきともきらいとも、何も言わなかった。
 それでも確かに、あの時のわたしたちは、心が通じ合っていたような気がした。
 そう思っていたのはわたしだけだったのかもしれない。彼の気持ちを確かめることを、しなかった浅はかなわたしに、嫌気が差す。
 なぜなら。柊が学校を休むようになった。わたしと一緒にグラン・デュオを完璧にした翌日から。

 もう、練習する必要がないからだろうか。お互いのパートをこれ以上ない最高の形に仕上げ、あとは課題曲発表日を待つばかり、の状態になったから? でも、最高の形を保つための練習だって必要なのに……

 休み時間に悶々と楽譜を眺めていたわたしを驚かせたのは、ヴィオラ専攻の星野くんの一言だった。

「柊の奴……退学するらしいぜ!」

 瞬間、悟った。だから彼は「楽しかった」と言ったんだ、と。