Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―

 これ以上弾いてなんかいられない、弾きたくない、それでも弾かずにいられない。何かの中毒みたいに、わたしは鍵盤に指を滑らせ、思い通りにならないメロディをムキになって奏でつづけていた。



 ――シューベルトのグラン・デュオを彼と弾くことになった、その日まで。
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