親友の小春は、「地味で平凡」なんてキャッチフレーズのつくヒロインだ。


小学生の時、いじめられっ子をかばってできた額の傷のせいで、自分に自信が無くなって、前髪で傷を隠すために俯きがちだった彼女に出会ったのは中学一年生の時。
まだ人に妄想話を語ることを恥ずかしいとも何とも思っていなかった私は、小春に「選ばれしものに授けられる証を持つ者」なんて、中二病発言から、一つの話を披露した。


その傷は小春が勇者である証であって、決して恥ずかしいいものじゃない、って。


それが思いのほか小春にウケてから、私は自分の想像の世界に小春をたびたび連れ出すようになった。

時々は現実的な突っ込みを入れながらも相槌を打って私の妄想話に付き合ってくれていた小春は、高校に入ってから王子様みたいな、麗司くんと恋に落ちる。


顔もイケメンで、雰囲気も華やかで、どこへ行っても中心になる人物の麗司くん。
男女問わず名前呼びで、人の懐に入るのがうまい、人たらしな彼から小春を好きになった。

「小春の芯の強さが、初対面ですぐにわかった」と一目ぼれだったらしい。


額に傷がある小春は、麗司くんと出会ってさらに明るくなったけれど、麗司くんに告白されてからも自信がなくて、恋愛には中々一歩、踏み出せなかった。

「人気者の麗司くんの隣には合わないから」、って、クラスの女子から嫌がらせを受けていたのも知ってるし、私も自分のできる範囲で守ってきたけれど、小春は元気がなくなっていくばかりで……
それでも誠実で一本気な麗司くんは小春を諦めないでくれたから、ふたりは結ばれることになった。



ふたりが付き合うまでの紆余曲折は、胸キュン、泣きキュンすること必至で、私はその登場人物の一員になれたことが誇らしかった。
小春は数々の物語のヒロインの例に倣って、彼氏ができても、いい意味で変わることなく、親友である私との時間も大事にしてくれる。
とてもやさしく、誰彼分け隔てなく接することのできる、明るくて、面倒見のいい、健やかな女の子。


ここで、少女漫画の世界だとそのヒーローとヒロインの友達の物語が「スピンオフ」として始まるわけだけど、私と浅岡くんの間にはすがすがしいくらい何もなかった。

本当に何も。


少なくとも、浅岡くんは今年同じクラスになるまで、私のことなんか認識していなかったはず。
麗司くんから小春について相談される中で少しくらいは名前が出てきたかもしれないけれど、きっとその程度だ。


だって、私こそ、小春の親友でなければ、モブ・オブ・モブのド平凡女子だからだ。

スカートの長さは校則どおり、膝頭が隠れる程度(うちの高校は校則が緩いので守っている生徒はほとんどいない)。
制服の下には下着が透けて見えないようにTシャツを着ているし、肩より伸びた長い髪は、首のあたりでひとつ結び。
シュシュとかかわいらしい髪飾りもつけずに、黒ゴムで縛っているだけ。
唇も薬用リップで色付きなんて使ったことがない。

しかも勉強だってそこそこで成績だって中の中で、運動だってそこそこ。

取り立てて「得意」と言えるものもなければ、「苦手」だと言えるものもない、本当に何のとりえもない、描かれるかも怪しいくらいにモブなのだ。