金曜日の丸一日、そして生徒公開当日の土曜日の午前中は、文化祭準備に割り当てられる。

朝はいつもみんなけだるそうに登校するのに、教室はいつもの朝とは思えないほど活気に満ち溢れていた。


今日は最後の全体練習だった。

体育館の舞台での出し物があるクラスは、朝から順にリハーサルの時間が設けられていて、私たちは午後三時頃からだった。

私たちのクラスは、窓を新聞紙や段ボールなどで塞いで女子更衣室とし、男子は隣の1組を同様にして更衣室と利用させてもらうことになった。

衣装に着替えた演者は、体育館への移動中、学校中の生徒の視線を一身に集めていた。
演者が廊下を通ると、生徒たちはさっと脇にそれぽーっと見惚れている様子は、モーセのなんとやらとか、大名行列とか、そういったのを彷彿とさせた。


ここ一週間で一気に気温が下がり、幾分過ごしやすくなった。

夏場は扇風機をガンガン稼働させながら稽古に臨んでいたが、それが無くなって衣装係が安堵していた。


私たちクラスの前に最後のリハーサルを行っていた、三年生のあるクラスのミュージカルを見学しながら、みんなは各々グループに分かれて最終確認をしていた。


そんな時だった。


ぽん、と肩を叩かれ振り返ると、「みすぼらしい」姿のシンデレラ、こころちゃんがいた。
灰で汚れた青いワンピースにエプロンをつけて、三角巾を頭にかぶったこころちゃんは「ちょっといい?」と私を体育館の外に呼び出した。


正面玄関で、上履きから体育館シューズに履き替え、体育館の裏にまわった。

そこはちょっとしたスペースになっていて、バスケットボールのポータブル型ゴールが立っており、よくここでバスケ部以外の連中がゲームをしている。

今はみんな文化祭の準備に忙しくて、誰もいなかった。

ちょうど、体育館の支柱で日陰になっているところでこころちゃんは立ち止ると、私を見上げた。


「私、浅岡くんに振られちゃったの」


 私は言葉を失った。

こころちゃんが浅岡くんに振られた事実に、と言うよりは、こころちゃんがもうすでに浅岡くんに告白していたことに、驚いた。

こころちゃんが、また口を開いて何かを言おうとしていたので、私は黙って次の言葉を待っていた。


「ちょっと前……って言っても夏休み終わるころ、かな。一緒のパートが多いから、ふたりで個人的に練習することも多かったから、私の中での気持ちが膨らんじゃって、それで……思い切って告白したの。そしたら、振られちゃった。実祈ちゃんには、協力してもらったから、一応報告しておきたくて……」

「協力、って……私、何にもしてないのに、そんな」

「ただ、私、本当に実祈ちゃん以外誰にも言ってないから、内緒に、して……くれると、嬉しい」