きらめく星と沈黙の月
「桜子!」


…へ……?


幻聴?


去っていった碧が、また近づいてくる…。


幻覚…?


「熱中症に気をつけろよ」


パコッと頭に何かがはまる感覚がし、一気に視界が暗くなった。


「汗臭いっつったら怒るかんな」


帽子だ。


碧が帽子を被せてくれたんだ。


「ありがと碧!」


ブカブカの帽子を押さえながら碧を見上げると、碧はなぜか顔を赤くして目を反らす。


「…なに?」


「何でもない。じゃーな」


優しいのか冷たいのか分からないけど、そんなのはどっちでもいい。


「応援してるね、碧」


「……サンキュ」


2度目の後ろ姿は、何よりも目映く映った。


キラキラ輝く後ろ姿。


4年ぶりに夏が始まった。


中1で止まった私の夏が、4年越しに今、動き出したんだ。
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