人通りのない旧時計塔校舎脇の道路。街灯のないこの道では、月明かりだけが視覚の頼りだ。

その傍ら。冷たいコンクリート上に横たわる、かろうじて人だとわかるモノ。

高い高い時計塔校舎から落ちたせいだと思う。うつ伏せに倒れているその死体は、頭が潰れ、手足はありえない方向に捻じ曲がっていた。

辺り一体に散らばる、赤黒い血液と贓物。あまりの惨状に、胃の中のものが逆流しそうになる。

口に手を当ててそれを抑え、私は死体を見下ろしながら泣いていた。もう助からない……どこか冷静な自分が、心の中でそう呟いている。

「ごめんね……」

気付いてあげられなくて。助けてあげられなくて。

私は後悔の念を抱きながら、ただただ泣いていたんだ。

* * *

息を飲むと同時に、勢いよく目を開けた。

「夢……?」

荒い呼吸で辺りを見回す。ベッドの上に寝転んでいるという状態を理解するまで、結構な時間を要した。

……そうだ。私、Sから出られなくなったんだ。

閉じ込められたシェアメイト、不気味な進行人、隠れている死んだ人。時間の経過に伴い、鮮明になっていく意識。昨夜の出来事が、頭の奥底から蘇ってくる。

汗にまみれた体を起こしながら、先ほどの夢を思い返していた。

やけにリアルな映像だった。目の前に転がる、頭が潰れた転落死体。それに、あの場所は見覚えがある……旧時計塔校舎の裏手の小道だ。

不思議なことだけど、これだけははっきりとわかった。あれは、私が実際に見た景色だ。

私は、1人の人間の死をこの目で見ている。そして、それが私に近しい人であることは間違いない。

じゃあ、あれが死んだ人だってこと……だよね?

奥底に隠されている記憶を堀り起こそうと目を閉じる。が、頭が潰れて損傷が激しい死体からは、性別すら読み取れない。

……あの死体は、いったい誰?