「おとーさーん、これ、なんて読むの?」

「どれどれ?」

男の子が広げている本を、レオンがのぞき込む。

「ああ。
それは人間、だ」

「にんげんー?」

男の子が可愛らしく、小首を傾げた。
それを、微笑ましくレオンは見ている。

「僕とおかーさんのことだね!」

嬉しそうに笑う男の子のあたまを、レオンは撫でた。
こんな光景がここでは毎日のように繰り広げられている。

あのあと、レオンが手に入れてきてくれた薬のおかげで私は彼の子を妊娠し、産んだ。
行為の最中、生まれてくる子供の種族について双方の意見が一致していないと、妊娠しないらしい。
なので、成功率が低いというのもあったようだ。

当然ながら、レオンと意見が衝突した。
苦労のないよう、レオンと同じライオンの子供がいい私と、多少の困難はあっても私と同じ人間がいいレオン。
喧嘩にもなった。

――でも。

『俺は獣と人間も家族になれるんだって証明したいんだ』

レオンのその言葉で私が折れた。
それにレオンは我が子の困難にもちゃんと、立ち向かってくれるはずだから。

「もう食事の用意ができるから、本を片付けて手を洗いなさい」