そんな私の言葉に、柚瑠木(ゆるぎ)さんは大きなため息をついて。どうすればいいのかとオロオロしているうちに、柚瑠木さんの運転する車は大きなホテルのエントランスへ。
 すぐにドアサービスのホテルマンが近寄り、柚瑠木さんは車の鍵を渡します。
 運転席を降りた彼は助手席のドアを開けて私を抱き上げたかと思うと、そのままホテルの中へと歩き出してしまいます。

「ゆ、柚瑠木さん! 私、ちゃんと歩けますからっ」

「この方が都合が良いんです、ちょっとだけこのまま大人しくしていてください」

 そう言った柚瑠木さんは、フロントのスタッフの女性に……

「予約していた二階堂(にかいどう)です。この通り妻の体調がすぐれないようなので、予定より早くチェックインしたいのですが」

 ……柚瑠木さん、今の私は健康そのものですよ? とはさすがに口に出してはいけなさそうなので黙っている事にします。

「もちろんです。二階堂様のお部屋の準備は出来ていますので、ゆっくり過ごされてください」

 フロントスタッフに渡されたカードキーを持って、私を抱き上げたままエレベーターへと乗り込む柚瑠木さん。結局エレベーターを降りて部屋に来ても彼は私を降ろしてはくれませんでした。
 柚瑠木さんは器用に私を抱いたまま、カードキーで部屋の鍵を開けます。そのままドアを開くと思ってたのに、柚瑠木さんはクスッと微笑んで……