導かれて、放れられない
「は、初めまして。
水田 桔梗と申します」
緊張か、恐ろしさなのか、心なしか震えている桔梗。
「ん。
単刀直入に言う。
なぜ、この世界に入ってきた?」
「え……?」

鋭く見つめられ、更にビクッと震えた。

「別に、怒ってんじゃない。
単なる興味だ。
お前さんのことは、簡単に調べた。
ごく普通のお嬢さんじゃねぇか。
そんなお前さんが、なぜ天聖と?」

「運命だと思ったからです」
「は?」
「きっと…バカにされるでしょうが、天聖さんに出逢えたことが運命に感じたからです。
それに、やっと再会できた感覚でした」
「両親は亡くなってるよな?なぜ亡くなったか知ってるのか?」
「え?事故としか……」
「…………そうか…やっぱ、知らねぇか……
知ってたら、アイツといられないか……」
「え……?あの……?」
「お前さんが思ってるより、過酷な世界だぞ。
それに、お嬢さんには無理だ。天聖の傍に居続けること。
悪いことは言わねぇ、手を引きな!
今ならまだ間に合う」
さっきの鋭い目つきが、更に鋭く光った。

「………もう、手遅れです。
それにもう二度と、放れたくないんです。
確かにわかってません。
天聖さんがいる世界のこと、何も……
でも、傍にいたいんです!」

怖くて、震えていた桔梗。
それでも真っ直ぐ聖二郎を見て、力強く言った。
「そうか…わかった。それも、運命かもな……
もう、下がりな」
聖二郎はゆっくり目を瞑り呟いた。そして、もう一言呟く。
「来たな…」
「え?来た?」

ダンダンダン………
バン━━━━!!!
「桔梗!!」
「え?天聖…さん?」
天聖は勢いよく来て、襖を開けた。
そして桔梗を抱き締めた。

「何された?どっか怪我してない?」
「いえ!何も!大丈夫ですよ。お話しただけです」
「そう…よかった……」

安心したように胸を撫で下ろした、天聖。
そして、聖二郎に鋭い目つきで向き直った。
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