導かれて、放れられない
「でしたら、どちらか一品にされては?
それでしたら、半分以下のお値段でご購入できますよ」
「じゃあ…そうしようかなぁ~」
「どちらになさいますか?」
「えーと…」
ガラスケースの中を見渡す、桔梗。
何気なく、髪の毛を耳にかけた。
ちょうど右耳が店員の目に止まる。

「え━━━?
天聖様の女…?」
「え?あの、何か……?」
「あ、いえ…すみません!」
「は?私、何かしましたか?」
「違うんです!」
「………??あの、じゃあ…これ包んで下さい」
「は、はい」
急に畏まる店員に、頭の中が“?”の桔梗。

奧に入っていった、店員。
「おい!天聖様の女が来てる!」
「は?なんで?」
「わかんねぇ…たぶんだけど、天聖様に贈るプレゼント買いに来たみたいだ」
「どんな女?」
「ほら、そこにいる」
端の方から覗く、店員達。

「は?地味な女だな。勘違いじゃね?」
「でも、羽のピアスしてた」
「あー黒い羽の?」
「うん、だから間違いねぇよ!」
「とにかく、気分の損ねないようにさせないとな。
天聖様に言い付けられないように」
「あぁ」

「お待たせしました」
「はい」
嬉しそうに受け取る、桔梗。
「あの…」
「え?」
「お客様は天聖様の……」
「え?天聖さんですか?
ここに来るんですか?天聖さん」
「来るというか、天聖様の管理する店ですよ。この辺全て」
「え━━━━?」
「知らなかったんですか?」
「え?まぁ……」
「じゃあ…やっぱ人違いだ!
知らないわけないもんな。天聖様の女が」
「あの、それってどうゆう意味ですか?」

「一応忠告しておきますが、勝手に天聖様と同じピアスなんてすると、殺されますよ?
あの方は、恐ろしい魔王ですから」
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