導かれて、放れられない
覚悟
「桔梗…」
「お願い…天聖さん。
もう…帰りましょ?」
桔梗は天聖の腕を掴み、懇願した。

「あ…そうだね。
桔梗にこんなとこ見せるべきじゃないね……」
そう言って、天聖は男の首を持ったまま横に振り払うように地面に叩きつけた。

「増見」
「はい」
増見に耳打ちする、天聖。
「………わかりました」
増見が天聖に一礼する。
「桔梗、帰ろ」
「はい」
そして天聖は微笑んで桔梗を車の方に促し、二人は車に乗り込んだ。

車に乗り込んでからも、桔梗は震えが止まらない。
天聖に包み込まれるように、抱き締められた。
「もう大丈夫だよ。大丈夫…大丈夫…」
ゆっくり背中をさすりながら、語りかけるように言った。

「天聖さん」
「ん?」
桔梗は天聖に向き直り、目を見た。
「これが天聖さんのいる世界なんですよね……」
「うん、そうだね」
「お父様の言ってた意味がわかりました。
過酷な世界で、私には無理だって。
それに……」
桔梗は先程の買ったプレゼントを取り出した。

「天聖さん、こんな時におかしいけどこれ受け取って下さい」
「え?これ……」
「ネックレスのお礼です」
「桔梗が傍にいてくれたら何も望まないって言ったのに……
フフ…でも、嬉しい!ありがとう!」
微笑み、頭を撫でる天聖。
そして嬉しそうに、プレゼントを眺めていた。

「…………これを買ったショップで、言われたんです。
天聖さんは“魔王”だって」
「そう…余計なこと言うよね…みんな」
「天聖さん、私……」

「まさか、放れるなんて言わないよね……?」
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