導かれて、放れられない
束縛
「今日から入った北林くんだ。
えーと、水田さん指導してやって!」
「あ、はい」
「水田さん、北林 慶司です。よろしくお願いします」
「はい、水田です。よろしくお願いします」
微笑んで挨拶する、桔梗。
「名前は?」
「は?ですから、水田です」
「いや、それは名字。
俺が聞いてるのは、名前」
北林に顔を覗き込まれ、見つめられた。

「あ…桔梗…です」
「へぇー桔梗ちゃんかぁ。
可愛い名前」
「あの、北林さん━━━━」
「慶司」
「へ?」
「俺のこと“慶司”って呼んで?」
「え?そんな……」
「いいじゃん!」
「無理です。恋人以外の男性を下の名前で呼べません」
「………恋人、いるんだ」
「え?はい…」
「へぇー、会ってみたいな…」
「は?」

「俺、一目惚れしたみたい。
桔梗ちゃんに……」

また波乱の予感がする━━━━━━

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
慶司は、桔梗の周りにはいないタイプの積極的な男だった。

「このセッティングを基本でお願いします」
「はぁーい!了解~」
「必ず、予約者の確認とできればその日の予約者の氏名は頭に入れておいてください」
「わかった、桔梗ちゃん」

慶司は“桔梗ちゃん”とずっとくっついて来る。
確かに桔梗が指導係だが、あまりにもべったりで桔梗はかなり退いていた。

「桔梗ちゃん、家どこ?
一緒に帰ろ?」
「は?結構です。お迎えが来るので」
「え?彼氏?」
「いえ、彼氏ではありませんが」

チンピラの一件があり、天聖に言われたのだ。
「桔梗、今日から常に俺の部下をつけるようにしたから」
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