導かれて、放れられない
マンションに帰りついた二人。
「俺は夕食の準備するので、ゆっくりされててください」
「あの、お手伝いしていいですか?」
「え?でもしかし……」
「天聖さんがいる時はそんなわけいかないですが、二人の時だけでも」
増見を見上げ、懇願する桔梗。
増見は思わず、顔をそらした。

「え?増見さん?」
「………わかりました。若がいない時だけなら…」
「はい、ありがとうございます!」
一緒に準備に取りかかった。

「増見さんって天聖さんの右腕みたいな方なんですよね?」
「そうですね」
「じゃあ…どうして、増見さんを私につけてくれたんだろう」
「え?」
「だって、右腕ってことは一番信用してるってことですよね?だったら━━━━━」

「桔梗さんは、若の愛情を甘く見てませんか?」
「は?」
「一番信用してるから、俺をあなたにつけたんですよ。若が言う“愛される覚悟”とは、こんなもんじゃないですよ。
あの方は、あなたが思っているよりもずっと支配欲求や執着が凄まじい方です。
愛してるからこそ、俺をあなたにつけたんです。
もう二度と怖い思いをさせないように、傷つけないように。
あと、もう二度と放れられないように………」
「え?最後が聞こえ━━━━」
「あ、鍋がふきこぼれますよ!桔梗さん、お願いします」
「あ、はい!」
コンロに向かう、桔梗。

【増見、桔梗の護衛と監視お願い!
必要以上に、他人と関わらせるな。
男なんか特に!】

「あなたはもう、若に囚われて外には出れないんですよ」
と、桔梗の背中を見ながら呟く増見だった。

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