導かれて、放れられない
「なんだか物凄く愛し合っていたのに、引き裂かれた記憶がある。
ずっと…また逢いたくて逢いたくて、探してた記憶があるの。
…………ってバカみたいな話よね?」

「━━━━━━ってバカみたいな話だよな……
でも、もう二度と放れたくない。
無性に、愛しくて堪らない」


全く別々の部屋で話す、天聖と桔梗。

でも、想いは同じだった。

「「信じる(ます)よ」」
それに真剣な表情で答える、増見と智実。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「で?どうするの?」
「あとから電話…してみる……
ちゃんと会って話したい」
智実の問いに、静かに答えた桔梗。

「でもさ、これ…ヤクザだよね…どうみても」
智実が名刺を指差して言った。
「だよね……でも、会いたい…」
「私は、関わらない方がいいと思うな……」
「え?」
「だ、だって!ヤクザだよ!?
どんな危険なことがあるかわからないじゃん!」
「うん…そうだね……」

智実の言ってる意味は痛い程わかる。
心配していることも。

でもそれよりもやっと逢えたという思いと、会いたいという思いがあまりにも強く、今の桔梗に迷いなんてなかった。

「じゃあ…桔梗、またね!
気をつけなよ!!」
「うん、お疲れ様」

帰路につきながら、桔梗はずっと天聖のことを考えていた。

キリッとした顔、見つめる熱い眼差し、抱き締める力強さ、心地よい声………
記憶の中の彼は少し若かった気がするが、全てが記憶のままだ。

「早く、会いたい」

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