導かれて、放れられない
苦痛
「パーティー?」
「そう、パーティー」
「なんで私が?」
「………それが、ね。
彼氏さんを連れてきてほしいの」
仕事の休憩中、唐突に智実に言われた。

「天聖さんを?」
「そう…確か、虎尾組の若頭なんだよね?」
「うん…」
「お願い……」
智実がここまで懇願するのは、よっぽどなんだろう。

「でも、なんで?」
「私…実はクラブでバイトしてて……」
「えーー!なんで……
それに、うちは掛け持ちダメなんじゃ…」
「うん、わかってる。
私、ここ来る前はホステスしてて。
でも、なかなか辞めれなくて…
週二回位なんだけど、続けてるの」
「それで、天聖さん?」
「うん、その日必ず同伴して出勤しなきゃいけない日で、なかなか同伴してくれる方が見つからないの。
北林さんも辞めちゃったから、もういなくて……」
「あ…ごめんね…」
慶司はあれから、すぐにここの仕事を退職したのだ。

「別に、そうゆう意味じゃないよ!
ただ、困ってるの……」
「わかった、天聖さんにお願いしてみる!」
「ありがとう!桔梗」

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ふーん。それで桔梗は平気なの?」
「平気…じゃないです……
でも、智実が困ってるし、私も一緒に行っていいみたいなので……」
今日も天聖が迎えに来てくれた為、車内で智実の件を話してみたのだ。

「友達の力になりたいんでしょ?」
「はい」
「わかった。桔梗が言うなら行ってもいいよ」
「ありがとうございます!」

「じゃあ…今からは俺の時間ね!」
「え?」
そう言って、口唇を塞がれ翻弄されたのだった。
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