導かれて、放れられない
運命
「連絡、くれるかな…?」
帰りの車内で煙草を咥えた天聖が、窓の外を見ながら頬杖をついて言った。

「どうですかね?
こっちはヤクザですから、関わりたくないと思うのが普通では?」
「………そう、だよな…」
運転中の増見が答え、天聖がため息をつく。

天聖もまた、桔梗のことを考えていた。

綺麗な眼、小さくて柔らかな身体、心地よい声………
天聖の中の桔梗も少し若かった気がするが、全てが記憶のままだった。

「会いたい……」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アパートに帰りついた桔梗。

天聖の名刺とスマホを握りしめていた。
いざ電話しようとすると、緊張して手が震えるのだ。

「ふぅー、よし!
とりあえず、会いたいから話だけでも!」
なんとか気合いを入れ、スマホを操作した。

『はい』
「あ…」
たった一言……一言だけなのに、息ができなくなる程の愛しさが募ってきた。

『もしもし?』
「あ、あの、私…さっき、レストランで……」
『会いたい…!』
「え?」
『今すぐに!君に会いたい!
どこにいる?』


桔梗は家の住所を伝えた。
30分程経って、インターフォンが鳴った。
「はい」
「こんばんは、天聖様の部下の増見と申します」
鍵を開け、顔を出す。
「あ、西尾さんは?」
「若は、ご自宅でお待ちです」
そう言って、車に誘導された。

連れていかれたのは、高級なタワマンだった。
最上階に着いて、家の中に誘導された。

広いリビングに大きなソファとテーブルしかない。
電気をつけず月明かりだけのリビング。

ソファの真ん中に、背を向けた天聖がもたれて座っていた。

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