とろけるような、キスをして。

新たな選択肢




 宣言通り、先生は焼肉屋さんに連れて行ってくれた。



「みゃーこは飲んでいいからね」



 メニューを開きながら何を頼もうか見ていると、先生にアルコールメニューを渡された。



「え、いいよ。先生飲まないのに私だけなんて」



 そのまま先生の車で来たため、先生は飲めない。



「俺のことは気にしなくていいから」


「でも……」



 私一人で飲むのは、やっぱり気が引ける。



「……実は俺さ、あんまり酒飲めないの」


「え?そうなの?意外」



 酒豪とまではいかないけれど、お酒強そうな顔してるのに。



「弱いのにたくさん飲んじゃって、酔っ払って記憶無くして皆に迷惑かけるから、今職場から酒禁止令出されてんのさ」


「……一体何やらかしたら禁止令出されんのよ」


「……ははは、それは俺も聞きたいくらい」



 だから、俺はいいの。みゃーこにまで迷惑かけるわけにいかないから、と。


どこまでが本当の話かはわからないけれど、先生がそこまで言うなら、とハイボールを注文。


好きなお肉をいくつか頼んで、先生も自分の好きなものを頼んで。


すぐに運ばれてきた私のハイボールと先生の烏龍茶。


ジョッキを合わせて、乾杯した。



「みゃーこって意外と酒強いタイプ?」


「んーん。そんなに。でもお酒は好き。こういう居酒屋の空気も好き」


「わかる。俺もこの空気好き。おかわり好きなの飲んでいいからね」


「うん。ありがとう」



 先生は本当に嬉しそうに笑う。もしかしたら先生は、誰かがお酒を飲んでいるところを見るのが好きなのかもしれない。


お肉が運ばれてきて、二人で網に乗せる。


お肉の色がだんだん変わるのを見つめていると、先生が口を開いた。


< 30 / 196 >

この作品をシェア

pagetop