とろけるような、キスをして。

二度目の帰省




*****


 ───そして、一ヶ月後。


 あっという間に面接の日がやってきた。



「みゃーこ!」


「あれ?先生、わざわざ迎えに来てくれたの?」


「もちろん。飛行機疲れただろ。車で来たから乗って」


「いいの?ありがとう」



 面接の日の午前十一時。地元の空港に着くと、到着ゲートのすぐ側に先生が待っていた。


頻繁に電話をしていたからか、あんまり久しぶりな感じもしない。



「みゃーこのスーツ姿、初めて見たかも」


「そうだよね。一応面接だから着てきたんだけど、久しぶりに着たからちょっとそわそわしてる」


「大丈夫、似合ってるよ。仕事できそうな感じ」


「それは褒めすぎ。全然そんなことないから」



 久しぶりにクローゼットの奥から出したスーツは、上京した時に適当に買ったリクルートのもの。


今の仕事はオフィスカジュアルならなんでもいいから、敢えてスーツを着る機会はほぼ無いに等しい。


そのため私は他にスーツなど持っていなかった。


 流石にこの歳でリクルートを着るわけにもいかず、一週間前に新調してきたのだ。


スーツを着ると、何故か背筋が伸びる気がするから不思議だ。


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