茨ちゃんは勘違い
一年B組城山茨、至急職員室に来て下さい。
「…で、何故こんな事をしたんだい?」

書斎と見間違う程に本棚は書籍で埋めつくされ、客人用のソファーは一目で高価な代物だと分かる。

絨毯は家庭用の物では無い。

だとしたら、これはオーダーメイドなのだろうか。

それとも全国共通で使われているのか。

見渡す限り、壁には賞状やら歴代の人物写真が額に入って飾られ、何故に職員室と比べてトップの人間の部屋はレベルが格段に違うのか、叱る本人を目の前にし、小言を上の空で聞きながら、茨は思いを馳せた。

「…聞いているのかい?城山君」
「ふぇ?」

気の抜けた返事が合図になり、西谷校長と茨の間に黒い影が瞬時に現れ、鈍い音と共に三秒程茨の意識を身体ごと吹っ飛ばした。



どがすっ!!



「んま゙っ!!…」



1、2、3。

茨が気が付いた時には、眼前に黒いブーツ。

見上げると、地獄先生もとい、黒酉の姿があった。

目が合った瞬間、茨の本能が警笛を鳴らす。



殺 さ れ る



「ひぎゃあぁぁあぁぁぁっ!!!!」
「喚くな小娘」

ゴキブリのように黒酉に背を向け、バタバタ逃げ出そうとする茨の背中をむんずと掴み、黒酉はそのまま持ち上げた。

背丈の差が恐らく30㎝はあるチビ茨(推定145㎝)とデカ黒酉(推定170㎝)は、まるで飼い猫を弄ぶ飼い主の図になる。
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