堅物女騎士はオネエな魔術師団長の専属騎士になりました。
2堅物女騎士は任務にあたります
「うーん、今日はどうもお肌の調子が悪いわねぇ……」

鏡に顔を映し、頬をぺたぺたと手で優しく叩きながら憂うのは、目覚めたてのジークウェルトだ。

「今日は少し保湿多めにしようかしら。マリーちゃん、白の15番取って頂戴」

「はい、ジーク様」

マリーは迷うことなく白い半透明の容器を大きな化粧箱から取り出すと、ジークウェルトに手渡す。

「ん、ありがと」

これが毎朝の日課である。


マリアベルがジークウェルトの専属騎士となって早20日が過ぎた。

専属騎士であるから、マリアベルの主な任務はジークウェルトの護衛である。本来ならば主人が在室の場合は部屋の前で警護をしつつ待機、外出時は主人の後ろを歩いて護衛する。
それが基本だと思っていた。……初日は。

だがいざ専属騎士として任務にあたってみれば、部屋の前に立っていても何もすることはないと一蹴されてしまった。そんな暇があるなら自分の仕事を手伝えと言われる始末であった。

『ぶっちゃけ部屋には結界が張ってあるのよ。アタシが扉を開けなきゃ解除されない強力なシロモノ。だから特別警戒する必要なんてないのよね』

なら騎士なんて必要ないのでは?と思ってしまうが、ところがそうもいかないらしい。

『その代わり身の回りの仕事も全部ひとりでやらなきゃならないのよ。ホラ、魔術師団って少し特殊でしょう?影の仕事をこなしている手前、傍にお手伝いさんを置くことは許されてないの。いつ裏切るか分からないのと、命を狙われる危険性も低くはないから、信用出来て咄嗟にお互いの身を守れる人間しか傍に置くことが出来ないのよね。特にアタシくらいのクラスになれば』

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