遊佐部長と私は上司と部下、専務と社員という関係はなにも変わっていない。だたひとつだけ変わったのは、その関係に彼が私のことを好きだという事実が加わったということ。
 
 でも本当に私のことが好きなのかいまだに信じがたく、もしかしたら一か月前のあの日のことは夢だったんじゃないのかと思っていたりする。
 
 もっと愛情表現していくから、そのつもりで──。
 
 まさかそんなこと……と思っていたけれど、遊佐部長はその宣言通り隙を見つけては私になにかと構ってくる。
 
 遊佐部長は三十四歳の大人の男性だ。今は彼女がいなくても、以前には付き合った女性が何人かいることだろう。だから女性の扱いに慣れているのか、社内だというのにスキンシップを求めてくる。そんなことをしたことがない私はいつも戸惑うばかりで、誰かに見られたらどうしようかと常にひやひや状態だ。
 
 でもこの一週間は名古屋支店移転の話し合いのための出張で、遊佐部長は東京本社にいない。鬼の居ぬ間に洗濯……とまでは言わないけれど、少しだけ心に余裕が持てている。