喧嘩最強男子の溺愛
◎ 第九章 噂

翌朝

思わぬ場所で蒼汰くんと再会したことを郁人に話そうか、それとも言わない方がいいのか悩みながら学校へ向かう電車に乗っていた。

ちゃんと話した方がいいよね。

郁人は心配するかもしれないけど、蒼汰くんがちゃんと謝ってくれた事を報告するべきだよね。

私は自分の乗っている車両を見回したけど、郁人は乗っていないみたい。

授業前に話せたらいいな。

学校に着き、教室に入るとなぜか皆が私に注目して。

どうしたのかな。クラスの皆に一斉に見られた気がする。

郁人の席を見るとまだ郁人は学校に来ていないみたい。

有希もまだ来てないや。有希はいつも遅刻ギリギリだからね。いなくて当然か。

私は自分の席に座り、隣の席の子におはようの挨拶をした。

すると、その子から驚くようなことを言われて。

「上野さんって、島田と仲良くしてるよね。でも昨日は島田じゃなくて南高の男と仲良く会ってたんだってね」

ってクラス中に聞こえる声で言われて。

「えーっ!その話、本当なの? うわー、見かけによらないねー」

なんて、他の子も私を責めるように同調している。

「ね、上野さん。あなたって島田と付き合ってるんじゃないの?」

「えっと、島田くんとは付き合ってないけど・・・。」

「いつも島田と帰ってるよね。それにこの前なんて一緒に仲良さそうにお弁当食べてたし。それで付き合っていないなんて、なんなの、島田をからかってるの?」

「そんなことないよ。島田くんは優しいから、一緒に帰ってくれてるだけで」

どうしよう。なんて説明していいか分からない。

「それってさ、島田をもてあそんでるってこと?」

「昨日の南高の男の人はどう説明するの?」

「島田はそれ知ってるの?」

昨日の、蒼汰くんと一緒にいる所を誰かに見られていたんだ。

皆はそのことを言ってるんだ。

そのことについてクラスの女の子たちから詰め寄らてしまった。

「あの人のことは、言いたくない」

蒼汰くんのことを色々と詮索されたら蒼汰くんに迷惑が掛かる。

昨日謝ってもらって蒼汰くんを許したんだから。

これ以上蒼汰くんについて誰にも話せない。

「うわ、出たよ。純粋そうな顔して二股なんて信じられないねー」

私は唇を噛んで、涙をこらえた。ここで泣くのは、違う。

教室が異様な雰囲気に包まれている時、何も知らない郁人が教室に入ってきた。

私の席の周りを女の子が囲んでいて、郁人の方へその子たちが視線を向けて。

その視線に郁人が気付き、

「ん? 何? 何かあった?」

どうしよう、私から昨日の蒼汰くんとのことを話したいのに。

第三者の尾ひれがついた話が郁人に伝わってしまう。

「し、島田くん!」

郁人には私から説明したくて郁人の側に行こうと席を立った。

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