やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました

ささやかな異変


 それから河村君は、職場で私たちの噂を勝手に広めてくれやがった。
 
 私に彼氏がいたと知ってる同僚には、「上手く」説明してくれ、ついでに何故か応援されるようになっていった……

(たった二週間しか経っていないのにっ)

 そんな河村くんを恨みがましく見上げては、ふいと顔を逸らす。
 だって彼は、なんだかんだで良い人なのだ。

 仕事は一生懸命、女性に対してチャラついた雰囲気もなく紳士的。誰に対しても公平でありながら一歩距離を置いた付き合いを徹底している。

 学生時代を思い返せば、彼はいつもにこにこと明るくて、人懐こい人っていう印象だったけど……そういえば、河村君は学生時代から人気があったよなあ、なんて記憶が今更ながら思い返す。

(フットサル部には女子部員が多かったっけ)
 その子たちの全員が河村君を好きだったとは言わないけれど、でもまあ……多かった、と思う。

 河村君の彼女とか、恋バナは誰かがこっそり話しているのを聞いていただけだけど。サークルにお邪魔している身だったから、邪魔にならないように端に寄っていたのだ。そうすると小さな話し声を耳が拾ってしまって……

 まあ、これだけのイケメンだし、モテ男で当然だろう。

(とはいえ、今日で研修おしまいだし……いいか)

 今後は同じ建物で働いてるからって、会うタイミングなんてそうそう無い。
 そもそも河村君が同じ省庁を受験してたなんて知らなかった。

(取り敢えず一息かな)
 ほっとする気持ちに、一抹の寂しさを覚える自分にふと首を傾げる。

 胸に手を当て不思議がる私に、例の科白が襲い掛かった。
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