【完】夢見るマリアージュ
■1■ *SIDE香* 夢を見るのはタダだ。
  
■1■ *SIDE香* 夢を見るのはタダだ。




『男になんて期待するような女になっちゃいけないよ。 これからは女だって学歴が必要な時代だ。
そうじゃなくたってあんたは器量が悪いのだから男に仕事でも負けないように頑張らなくちゃいけない。』

それは幼い頃から母が私に言い聞かせてきた言葉だ。 大人になって一人暮らしを始めてからも呪いのようなその言葉は脳裏から消えた事はない。

母は自分を負け犬だと言っていた。
私が幼い頃から父は他所に女を作り実家には余り寄り付かなかった。

容姿だけは人より良かった父は、派手な身なりで女ウケがするタイプの男性だと記憶している。

それに引き換え母は私に似て地味なタイプの女性だった。 私が出来てから結婚しても父の浮気癖は収まる事がなかった。

母は手に職がなかったのでパートを掛け持ちして、家にロクにお金を入れない父の代わりに私を育ててくれた。 そんな母には感謝をしている。

けれどもそれと引き換えに、母の口から飛び出る呪いのような言葉は私の自尊心を奪い続けた。

< 1 / 253 >

この作品をシェア

pagetop