【完】夢見るマリアージュ

共通の趣味があって、好きな物が似ていたからすっかりと北斗さんが阿久津フーズファクトリーの次期社長だっていう事を忘れていたんだ。

「あ、あ、あ、あの……」

思わずどもりながら顔を上げる。北斗さんは口元を隠し、頭を抱えだしてしまった。
や、やっぱり冗談だよね。 北斗さんが私と付き合いたいなんて…。

「ごめん、突然こんな事言われたって困るよな…」

「いえ、あの…そうではなくって…」

「勿論直ぐに返事が欲しいって訳じゃあないんだ。
こんな事を突然言われたって君も困るだろうし……
だから、返事は急がない…」

それから食べたピザもワインの味も分からなくなった。  気まずい空気が包み込み、何を話せばいいか分からなかった。

そもそも男性に告白をされた経験はない。
今まで男の人には気持ち悪がられて避けられてきたタイプだ。

食事を終えて送って貰った車内でも何故かぎくしゃくしてしまい、今日のお礼を言って逃げるように北斗さんの車から降りた。

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