【完】夢見るマリアージュ
『香は私に似ちゃったのね…。せめて容姿だけはお父さんに似ていれば良かったのに…』
『その癖ぐずでのろまな所は私に似ちゃったねぇ…。 かわいそうに』
『でもね、香。勉強を頑張って一流の大学に出て良い企業に就職すれば大丈夫だからね。 結婚になんて夢を見てはいけない。』
幼い頃からぼんやりとしていて、他の子より出来の良くない私を母はいつもため息混じりで見つめていた気がする。
元気でハキハキとした子に育って欲しかったに違いない。 けれど母の願いに反して私は幼い頃からぐずでのろまで周りを苛つかせるタイプの子供だった。
母に褒められた記憶はない。
幼い頃にありのままの自分を愛されなかった子供は途端に自己評価の低い子に育つらしい。
私はその典型的な例だと思う。
いつだってありのままを受け入れて欲しかったのに、そんな私を母は少しも認めてくれやしなかった。