【完】夢見るマリアージュ
’城田さん’
’今日も残業だったんだ’
’いつもありがとうね’
都合の良い夢を見てはいけない。 夢を見るのはタダだけど、夢を叶えるのはまた別の話だ。
彼が私の名前を知っていた。 残業をいつもしている事も認知していた。
特別な事じゃない。 いつか阿久津フーズファクトリーを継ぐ世界の違う人なのだから。
だから勘違いをしてはいけない。 岸田さんや青柳さんさえも相手にしない彼が、私の事なんて気に掛ける奇跡は今後一切起こらないだろう。
夢を見るのはタダだけど分相応だってわきまえている。
でもこの湧き上がるときめきと胸のドキドキ。 未来が分かり切っている結末に 夢なんて描きたくないのに――