ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第7話 籠の中の乙女】

「それで、ジークヴァルトの小鳥は、王城にとどまることになったのね?」

 目の前でひざまずいて(こうべ)をたれているカイに、王妃は問うた。

「恐れながら王妃殿下。リーゼロッテ・ダーミッシュ伯爵令嬢は、ハインリヒ王太子殿下の庇護の下、ジークヴァルト・フーゲンベルク公爵閣下がお世話をされることとなりました」
「あらそう、つまらない」

 王妃は手に持った扇を、ぱたりとたたんだ。

「公爵閣下がしばらく王太子殿下の護衛を外れるため、当分の間、不肖わたくし目、カイ・デルプフェルトが、ハインリヒ様の護衛を務めさせていただきます」

 カイの言葉に、そう、と王妃は興味なさげに返した。

「あの子は……、ハインリヒは、今どうしているかしら?」
「王太子殿下は……おそらく、殿下の奥庭にいらっしゃるのではないかと……」
「ああ、そうね」

 ハインリヒのことだ。今頃は、おもいきり癒しを求めていることだろう。

 始終、恭しい態度を貫いていたカイは、ふいに顔を起こしたかと思うと、王妃の目を無礼にもじっと見つめた。

「ときにイジドーラ様。リーゼロッテ嬢は、イグナーツ様のご息女なんですよね?」

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