ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第2話 深窓の妖精姫】

 時をさかのぼること、王妃のお茶会が開かれる少し前のこと。十四歳のリーゼロッテは、領地の屋敷で何の代り映えもしない毎日を送っていた。

「お嬢様。今日はどのようにいたしましょう?」

 小さなスツールに腰掛けたリーデロッテの髪をブラシで梳きながら、侍女のエラが声をかける。

 果ての見えない廊下の床を、延々とモップ掛けをする夢をみたせいか、リーゼロッテはあまりぐっすり寝た気がしていなかった。夢の中、廊下がピカピカ・ツルツルになるまで延々と磨き続けたのだ。

「エラのおまかせでお願いするわ」

 あくびをこらえながらそう答えた。

「かしこまりました、お嬢様」

 慣れた手つきでエラは、リーゼロッテの蜂蜜色の艶やかな髪を、器用に編み込んでいく。ゆるくウェーブのかかった髪をハーフアップにして、仕上げにリーゼロッテの瞳の色に合わせた緑のリボンを結んだ。

「今日もとてもお可愛らしいです」

 光かがやくリーゼロッテの髪を見て、エラは満足そうにうなずいた。

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