ふたつ名の令嬢と龍の託宣

【第6話 龍の託宣】

「ジークヴァルトさまー、入りますよー」

 応接室のドアがノックされた後、いささか気の抜けた声が聞こえてきた。

 返事を待たずして扉が開き、灰色の髪の少年が顔をのぞかせる。リーゼロッテよりも年上のようだが、好奇心にみちた琥珀色の瞳が人懐っこそうな印象を与えていた。

 扉を開けた少年が一歩下がると、ハインリヒ王子が優雅な足取りでするりと部屋に入ってくる。とっさのことであったが、リーゼロッテはソファから立ち上がり、条件反射のように腰を折って礼を取った。

「いいよ、楽にして」

 座るよう促されたが、リーゼロッテは自分が上座の椅子に座っていたことに気づき、あわててドアに近い長椅子のほうに移動した。
 
途中、よろけそうになり、ジークヴァルトに腕を引かれて、リーゼロッテはふたりがけのソファに押し込まれる。その横にジークヴァルトも腰を下ろした。

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