意地悪な副社長との素直な恋の始め方
ふたりだけの秘密

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補習もなく、留年の危機も回避して、無事突入した高校最後の夏休み。

アルバイトに勤しむ一方で、カラオケだのテーマパークだのと高校の仲間たちと遊び歩き、バカなことをやってバカ笑いし、わたしは正しく「青春」を謳歌していた。

約一か月の夏休みを締めくくるメインイベントは、高校の仲間たちとの一泊二日の小旅行。
海辺のキャンプ場で花火に告白大会といかにも青春な時間を過ごし、こんがり日焼けして、とっぷり日が暮れた頃、夕城家最寄りの駅に帰り着いた。

はしゃぎすぎて疲れていたけれど、早朝にはひとりこっそり起き出して、朝焼けの海を思う存分撮影できたし、大満足だ。

店に持ち込んで現像してもらわなければならないのだけが、残念。
ひとり暮らしを始めたら、押入れに自前の暗室を作ってみようかと検討中だ。


(それにしても、暑い……バス代ケチるんじゃなかった……て言うか、タクシー乗ればよかった……)


まだまだ夏真っ盛り。日が落ちても蒸し暑い。
むしろ、闇の濃度が増すにつれ、酸素が薄くなっていく。

駅から歩くこと二十分。
帰り着いた豪邸は、この時間にしては不自然に静まり返っていた。


(あれ? 芽依、いないの?)


土産物屋で見つけた貝殻のモチーフが付いたシュシュは、ぜったいに芽依好みだと自信がある。
さっそく喜ぶ顔が見られると思っていたのに残念だ。


(ま、いっか。別に明日でも。腐るものでもないし……)


めいっぱい遊んだ疲れから、遅くまで起きていられる気がしない。

二階の自室へ直行、ベッドへダイブしようと思ったが、ふとリビングから漏れる明かりに気づき、足を止めた。

解放感あふれるリビングへの入り口から中を覗けば、ソファーで眠る芽依の姿が見えた。

その傍らには、こちらに背を向けた上半身裸の男がいる。


(ちょ……だ、誰っ!? け、ケーサツ……)

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