婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
断罪

王都までの道中は、とくに危険に遭うこともなく至って順調だった。

頑丈な馬車にはアレクシアとディナが乗り、メイナードの護衛の騎士三人がその周りを囲う。

移動中はずっと馬車に揺られることになったが、メイナードと一緒の旅だと思うと不安はなく、そのせいか輿入れのときほどの疲れは感じなかった。

以前よりも早く、出発五日目の夜にはで王都にあるブラックウェル公爵家のタウンハウスに入ることができた。

タウンハウスには、五人の使用人がいた。

普段主人不在の屋敷だが、ときどきルーサーが訪れて管理状況を確認していため、すぐにでも生活できるよう整えられていた。

しかし予想外のことが起きた。気が利く使用人たちは、メイナードとアレクシアの部屋を同室としていたのだ。

寝室の中央には、体の大きな男性騎士が四人は眠れるような広いベッドが存在感を放っており、メイナードとアレクシアを沈黙させた。

ディナも初めは困惑していたけれど、「夫婦だから当然なのですよね」と切り替えて、アレクシアを残して自分に用意された部屋に移動していった。

部屋に残されたふたり。アレクシアは固まるメイナードに問いかけた。

「あの……どうしましょうか」

驚きはしたものの、アレクシアとしてはメイナードと同じベッドで眠ることに抵抗はない。

出発の前日に想いを伝えあい、ふたりの気持ちは重なっているのだから。

本当の夫婦になるのはサザラント城に帰還してからと約束しているが、早まったとしてもとくに問題はないと思っている。

(メイナード様にならなにをされても大丈夫)

むしろ触れてほしいと思っている。

メイナードから与えられた、頭の中が真っ白になるような口づけを、ときどき思い出してしまうのだ。

彼の中でのけじめなのか、メイナードは道中アレクシアに触れてくるようなことは一切なかった。

でもアレクシアは夫とのふれあいを望んでいる。恥ずかしくて決して口には出せないけれど。
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