婚約破棄されたので薬師になったら、公爵様の溺愛が待っていました
月夜の約束


混乱する王宮からタウンハウスには、ルーサーの転移魔法で戻った。

とても疲れていたが、休むより先に事情が聴きたい。

メイナードもアレクシアの気持ちを分かっていた。

着替えもせずに、ルーサーを含む三人で応接間に籠り説明の時間を取ってくれた。

「実はメイナード様たちが出立した直後に、リリー子爵がやって来たんです」

ひと言目にルーサーがそう言った。

「え? 叔父様が?」

アレクシアの母の実家であるリリー子爵家。数年前に祖父母が亡くなり今は母の弟が当主をしている。

「着の身着のままの状態でした。王太子に捉えられていたところを、命からがら逃げ出して、王家の影響力が弱いブラックウェル公爵領を目指したそうです。アレクシア様が嫁いでいるのも大きかったんでしょうね」

「でも、どうして叔父様が捕らわれたの?」

「王太子殿下の異変を治してくれってことだったみたいです。リリー子爵家の薬は有名ですからでもリリー子爵はその命令に従わず拒否したようです」

「どうして叔父様は拒否したの? リリー子爵家はどこの派閥にも属していないし王太殿下を見捨てる理由はないと思うのだけど」

むしろ政治からもっとも遠いところにいる貴族と言えるだろう。
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