恋歌-Renka-
第2章




第2章 *軋む心*




「あ、私の家はここだから。」




目の前にある一軒家を
指差して隣にいる西谷に話しかける。




何故、こんなことになったのか…
話は数分前に遡る。




二人で学校を出て
ちょっと先にある
十字路まで来た。



「じゃあ、私はここで」



「いや、送りますよ」



「え?」



彼の言葉に唖然とする。




「いや、だから家まで送ります」



「いやいやいや、いいよ!悪いから!!!」




「いーから送らせてよ!」



口調が変わり
私の手をとって微笑む。


ドキッ



鼓動が高鳴る
心臓がうるさい
何だ、これ?



そのまま断りきる事も出来ずに
さっきと同じように肩を並べて歩き出す。




そして今に至るわけだ。



「表札………」



彼が不思議そうに
表札を見つめて呟く。




”吉野“




表札に書かれた名前。




私は、何も言えずに佇む。





蘇るのは暗い闇…
思い出したくもない
おぞましい出来事。



彼はそんな私の心に
気づいたのか優しく微笑んで



「今日はありがとう。じゃあ、また明日ね。」




そう言って手を振る。



私は複雑な気持ちで



「また明日。」



と呟いたーーーーー。
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