ビルの玄関で再び渡瀬と会って、滝川が予約した店へ向かう。行き交う人の中、隣を歩く渡瀬に、あの時ではないのだと改めて思う。

「? なに?」

問われてはっとした。どうやらじっと見つめてしまっていたようだった。

「いえ、……あの、……、渡瀬くんが居るなあと、思って……」

千秋が言うと、渡瀬くんは、なにそれ、と言って笑った。笑ってそれから、ふと千秋の顔を見て、驚くほど真剣な瞳でこう言った。

「……居るよ。……もう、綾城さんを残して、消えたりしない」

え……。