「渡瀬! こんなところに居た!」

千秋と渡瀬くん以外誰もいない筈だった教室の扉を開けたのは、生徒会の副会長だった植山遥(うえやまはるか)さん。植山さんは当たり前のように教室に入ってきて、渡瀬くんの腕を取った。

「先生たち、記念撮影してるよ。行こう?」

「あ、……でも……」

「早くしないと、思い出がなくなっちゃう」

行こう、とぐいぐいと渡瀬くんの腕を引いていく植山さん。渡瀬くんは何度も私を振り向いてくれたけど、正直渡瀬くんにこんな地味な子は似合わないと思う。植山さんのような、快活で物おじしない、きれいな子じゃないと、渡瀬くんの隣は務まらない。

教室に一人取り残される。地味で、目立たない、教室の埃と同等の私。

はあ、とこぼしたため息が、思いの外重たく床に落ちてびっくりしている。……きっと、期待しすぎたからだ。

耳にこだまする渡瀬くんの言葉を大事にして、今日、高校を卒業しよう。
四月になれば、新しい生活が待っているんだから、と言い聞かせて――――。