空を舞う金魚
(……、…………)

え……?

さわさわと聞こえる店の客の談笑に交じって、なにか聞きなれない言葉を聞いた。千秋がぽかんと砂本さんを見ていると、砂本さんは困ったように苦笑いした。

「……そんなに驚かれると、困るな……。そんなに意外だった?」

コクコクと頷くことで応える。砂本さんは、そっか~、と困ったように頭を掻いた。

「え……、ど、どうして、私なんですか……?」

砂本さんは課内のムードメーカーで部、部課長からも信頼されている。任された仕事は完璧で、後輩の教育にも熱心な、人好きする笑みが魅力的な男性だ。女子社員から見たら、かなり『イイ男』の部類に入るだろう。

その砂本さんが何故地味で目立たない千秋なんかを良いと思ったんだろう。何か仕事で失敗でもして目立っただろうか。そんなことを考えていたら、砂本さんが微笑った。
< 8 / 153 >

この作品をシェア

pagetop