空を舞う金魚

「それなら……、そうしたら良いじゃない……。だって……、いつも渡瀬くんの隣に居るのは、植山さんだわ……」

もがきながら水面を泳ぐ千秋と、優雅に水面を舞う渡瀬や植山とでは、並んで歩くのだって違うだろう。卒業式の時に渡瀬を連れ去った植山も、同窓会の時に渡瀬と一緒に歩いていた植山も、自信に満ちていてそれがさも当たり前のようだった。そんな風に、千秋は振舞えない。

そう言うと、植山さんは少し口調をきつくした。

「そんな気持ちなら、もう渡瀬くんに係わらないで。渡瀬くんが余計に辛い思いをするだけだわ」

「…………っ」

どうして渡瀬の気持ちを植山から聞かなくてはいけないのだろう。悔しくて言い返そうとして、……でも出来ずに居たら、背後から声を掛けられた。
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