寝室に入り、ベッドの上にふたりで座り込んだ途端、大きな胸の中に閉じ込められた。


「……藍の全部が欲しい」


甘く掠れた声が耳に響く。

真っ直ぐすぎる物言いに、胸が詰まった。

胸元で小さくうなずくと、一層力を込めて抱きしめられた。

伝わる彼の速い鼓動に驚きながらも私と同じように緊張しているのだと悟る。


「想いが通じたばかりで、性急すぎる自覚はある。でもずっと……藍と暮らし始めた日から、触れたくて仕方なかった」


大きな手が私の頭を撫で、つむじに小さなキスを落とす。

覗き込まれた二重の目には抗いようのない激しい情熱が潜んでいた。

じわじわと体の内側から湧き上がる熱が、体温を上げていく。


「藍が好きだ」


「……私も櫂人さんが好き」


それが合図だった。

どちらともなく重ね合った口づけはどんどん深くなっていく。

角度を変えて、何度も口づけられ頭の中が真っ白になる。

額、瞼、鼻、頬と幾つもキスの雨を降らされて、私の身体が敏感に反応する。

首筋にかかる彼の吐息が熱い。

カーテンの隙間から細い月の光が入ってくる。

微かな光が愛しい人の逞しい背中を照らす。

汗ばんだ長めの髪をかき上げる姿が壮絶な色気を放っていて、胸がキュウッとなった。

先ほどまでの緊張が噓のように、今はただこの人と、深く触れあってひとつになりたいと願う。

素肌に感じる、少し高い体温がこんなにも心地いいなんて知らなかった。

長く骨ばった指が私の身体を、まるで壊れ物のようにそっと触れて、暴いていく。

彼が触れてキスを落とした箇所がどんどん熱をもっていく。


「藍」


切なく、まるで請われるように名前を何度も呼ばれて、お互いの体温を分け合い、大好きな人の腕の中で私は幸せな一夜を過ごした。