「とうとう、明日か……」


仕事から帰宅して冷蔵庫の脇に貼り付けている、小さなカレンダーを見て独り言ちる。

自宅には今、私ひとりだ。

今日は帰宅が遅くなるので、明日のパーティーに備えて先に身体を休めるようにと櫂人さんに言われた。


「婚約パーティーってどんな感じなんだろう」


事業提携発表が主な主旨なのだが、そこで正式に婚約を発表する予定だ。


『あからさまな政略結婚だと周囲に思われたくない。藍を大切に想う俺の気持ちを皆に理解してもらいたいんだ。だからパーティーではほかの男に目移りせずに俺のそばにいろよ?』


『め、目移りなんかしません』


クックッと声を漏らす彼はパーティーを楽しみにしているようにさえ見えた。

明日は彼に見立ててもらったドレスを着用する予定だ。

夕方からのパーティーに間に合うよう、支度をお願いした中西さんの元に櫂人さんと訪れる段取りになっている。


「……明日は上田さんも出席予定だし」


彼女の家柄やこれまでの付き合いを考えると
当然なのだが、憂いが思わず声に出る。

上田さんはあれ以降来店していない。

彼女の目的は今もよくわからないが、櫂人さんと私の仲を快く思っていないのは確かだろう。


プロポーズをしてくれた櫂人さんの想いを疑うわけではないが、自信のない私は疑心暗鬼にかられてしまう。

薬局に来店した、あの日の上田さんの台詞が頭から離れない。

上田さんが指摘した女性は白坂さんだと今では確信しているが、それを櫂人さんにぶつけられずにいる。

さらには謄本がまだ届かないと嘘をつきとおし続けている。

最低だと思いながらも入籍の日を少しでも先送りにして逃げている。



こんな私は櫂人さんの隣にふさわしいとは到底思えない。