偽装結婚のはずが、天敵御曹司の身ごもり妻になりました
12.一生をともに歩こう
姉貴が心配しているから、と貴臣くんに告げられ蘭子さんの自宅に車で向かう。

実家の近くに赴いてもし両親に会ったらと、この期に及んで往生際の悪い考えが浮かぶ。

そんな私の心情を悟ったのか、貴臣くんが明るい調子で言った。


「藍のご両親には連絡していないし、実家に戻りにくければ姉貴のところに泊ればいい。もしくはこっちまで送り届けるから心配しなくていいよ」


「ううん、大丈夫」


「藍、俺にまで遠慮しなくていい」


貴臣くんが穏やかな口調で告げる。

兄代わりは昔も今も変わらず私を甘やかしてくれる。

学生時代も何度もこんな風に車で迎えに来てくれた。

助手席に乗るのすらドキドキしていたのは幼い初恋のいい思い出だ。

でもいつまでも甘えていてはいけない。


「送ってもらうのは申し訳ないし、実家に帰るよ」


「藍、無理しなくていいぞ。おじさんとおばさんにはなにも話していないんだろ?」


「そうだけど……いい機会だからきちんと話すわ」


これまで両親には真実を告げていなかった。

たくさんの人を欺いてきたバチが当たったのかもしれない。

嘘を重ねるのはもうやめるべきだ。
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